社員インタビュー奥川恭平さん

カメラというクルマの目から、
安全な未来を見つめたい。
設計開発 奥川 恭平
困っている人の助けになることがしたい。子どもの頃から、よくそんなことを考えていた。自分が好きな「ものをつくること」で、できたら最高だ。それはやがて、理工学部の大学院で3年間取り組んだ、車いすをいかに安全かつ円滑に移動させられるかの制御の研究につながっていった。就職活動の時、最初は医療機器メーカーを考えた。しかし、自分が本当にやりたいことを考えていったら、クルマの安全技術に取り組む会社にたどり着いた。交通事故をゼロにしたい。それは高校生時代に大切な友人を交通事故で亡くしてから、ずっと心の奥にあった思いであった。

入社以来、取り組んできたのは車載カメラシステムの開発。「クルマの前後左右4カ所に搭載したカメラの映像を合成し、クルマを上から見たような映像にする全方位カメラシステムの開発に取り組んでいます」。これは、ドライバーにとってのいわば「もうひとつの目」。狭い路地を通る時や駐車時に便利なだけでなく、人やクルマ、障がい物との事故を防ぐためには今や欠かせない技術だ。「私が担当しているのは、4つのカメラの映像をつなげて表示する時のつなぎ目のズレを補正する『キャリブレーション』という画像処理技術。ソフト設計者として、いかに早く、いかに見やすく、そして美しくひとつの映像をつくり上げられるかが腕の見せ所です」。
設計図やパソコン上ではうまくいっても、実機に落とし込んでみると「キャリブレーション」の精度が基準値もこえられないこともある。「そんな時は何千、何万のシミュレーションと社内評価を繰り返して問題点をつぶしていくんです」。それは気の遠くなるような作業だ。しかし、この技術が広く世の中に普及していけば、自動車事故が1件も起きないような毎日を実現できるかもしれない。そう思うと力が湧いた。先輩や上司のサポート、そして映像を扱う他部署での知見を取り入れることで、めざす性能を一つひとつ達成していった。

人間が日常的に情報量として脳にインプットしている割合は、視覚情報が約80%と言われている。クルマの安全技術のなかでも、「目」にあたるカメラの技術は極めて重要な役割を担う。「現在、取り組んでいるのは『より正確に映し出す』ことに特化したカメラ技術です。次は、カメラ自体で移動物を検知してアラートを出す『検知系のカメラ』を。さらに先にいくとカメラがクルマの目となって『自動運転するためのカメラ』をつくりたいと思っています。近い将来、自動運転の実現に向けた、障がい物別の回避技術などに少しでも貢献していきたいですね」。カメラやソナー、レーダーなどが車に搭載されるようになって、事故は確実に減っている。しかし、めざす場所は遙か彼方だ。「まだまだ、やらなきゃいけないことが多くって」。そう語る彼の目は、まっすぐ前だけを見つめている。

プロフィール
奥川 恭平(おくがわ きょうへい)
設計開発
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社
2014年入社 理工学研究科卒
子どもの頃は、毎日のように校庭や近くの公園で、野球やサッカーなどをして遊んでいたという彼は、今も月2〜3回は、フットサルで汗を流しているそう。最近ハマっているものはアコースティックギター。
*記事の内容は取材当時のものです。